環境デザイン・アトリエ

横浜の建築家からのメッセージ。
日々感じた事を綴ります。

2014年6月29日日曜日

施設とそれが求める質

中村拓志さんの狭山湖霊園にある二つの建物を見せて頂く。
中村さんというと、どこか商業建築が得意な人、という勝手なイメージを持っていた。

今回見せてい頂いた建物は、霊園の管理棟と礼拝堂の二つ。
どちらかと言うと、静かで、厳かで、長い時間にも耐えうる質感とデザイン、が求められるタイプの施設だけれども、見せて頂いた二つはその要望にしっかり応えていた。

「施設」(ビルディングタイプ)は、同時にその「質感」を要求する。
例えば、モスクを日本のお寺みたいにつくったら、イスラムの人は怒っちゃうだろう。
モスクは、その形状が多少違ってもやっぱりモスクに見えなくてはならない。

どこが「らしさ」で、どこで新しい試みをするか、が建築家の勘所であろうけど、中村さんはそのバランスが優れた人だと思う。
昔、村野藤吾さんにも似た印象を持ったことがある。
画:hiromichi yasuda



2014年6月25日水曜日

あっという間に・・・

先日のイラン旅行が濃密な1週間だと思ってたら、
帰国してはや10日。
どうしましょ・・・
って、どうしようもないけど。

こうして月日が過ぎていくと、あっという間におじいちゃんになっちゃいます。

時計の針を、もう少しゆっくりすすめる為にはどうしたら良いのか?
思案中。
なんて、無駄な事考えてる間にも・・・過ぎていく・・・

時は金なり。
画:hiromichi yasuda

2014年6月22日日曜日

英語とアメリカ人、日本語と日本人

以前旅行した時、同行したなかに英語をネイティブに扱う日本人女性がいた。

聞くと、幼い頃から大学までアメリカで生活していた、そうだ。
だから、英語で話しているのを見ると、まるでアメリカ人、のように見える。
対して、日本語で話していると、日本人、のように見える。
(日本人だから当然だけど・・・・)

彼女が話す英語を聞いていると、
その淀みなく話すネイティブな英語を聞いていると、
アメリカのむちゃむちゃ仕事ができるキャリアウーマン・・キャリアを積んで自信をもってる女性、に見える。

他方、日本語で話すのを見ていると・・・普通の女の子・・・というか女子高生のような雰囲気を醸し出す。
語る言語が変わるだけで、独りで二つの人格を持っているようで不思議であった。

そう言えば、以前中国を旅行した際の現地の会話に、何か議論している・・・というか口論しているように感じたことがあった。

僕らが何となく思っている「その国らしさ」は、会話とその仕草にも現れる。
画:hiromichi yasuda


2014年6月19日木曜日

地下に向かう住戸(イランその3)

最初に宿泊したホテルがそうだったのだが、
イランの住居は、地下に向かっている、気がする。
伝統的な建物の作り方は、地面を掘って、掘り出した土を日干しレンガにして、壁を立上げ、ボールト屋根にする・・とか。

それは、究極の地産地消。
その場で出た土は、その場で処理しましょ。
自分ちの建材は、自分ちでまかないましょ。

僕らみたいに、遠くカナダから木材を輸入し、中国の石を使い、西洋の衛生陶器を使う・・・事はないのだ。

ま、勿論、イランと言えども現代ではいろんな建材を使っているけれど・・・

住居が地下に向かうのは、もう一つの理由がある。
地下は、涼しい、のである。
日本みたいに湿気が無いから、日差しを遮る地下は、本当に快適であった。

画:hiromichi yasuda



2014年6月16日月曜日

パラダイス(イランその2)

イランでの最初の宿泊は、テヘラン南部のカシャーンという町のホテルだった。
旧邸宅をホテルに改装したその建物に入ると、初めて見る「中庭」があった。

「パラダイス」は、楽園とか桃源郷とか極楽浄土とか・・至福の空間の代名詞みたいになってるけど、元々は古代ペルシャの中庭「パイリダエーザ」が語源だそうだ。

惜しげも無く湧き出る噴水と、透明感溢れる池。
あおあおとした樹木と色とりどりの花、小鳥の鳴き声、木陰にハンモックなんか吊るして本でも読みたくなる、架空の楽園。

動物は愚か、植物すら見捨てた様な砂漠を延々と走ったのちに、やっとたどり着いた集落で最初に待っていたのが、そんな楽園の風景だった。

翌日、窓から差し込む日差しと小鳥の声で目が覚める。
ホント? まさか、童話の世界じゃあるまいし・・・
パラダイス・・・・は、これか、
身をもって知った瞬間。

一つ、残念だったのは、僕が薄命の美少女、かなんかだと絵になったのだけど・・・・
健康すぎる中年男性・・の憂い。
画:hiromichi yasuda

2014年6月14日土曜日

バザールでござーる(イランその1)

イランにはバザールが数多くある。
バザールとは、モスクの周辺に出来た商業地(市場)の事で、
日本だと門前町みたいなところだけど、現代だと、多くの人が一日中ショッピングを楽しむイオンみたいな場所。

今回の旅(イラン)で、印象深かった一つが、バザール。
日用品から、お土産、高級品まで、お酒を除いてほとんどある。

今回同行したなかに、ショッピングが大〜い好きな女性(Sさん)がいて、僕らも一緒につき合う事になった。最新のiPhone売り場の隣で、ペルシャ絨毯やタイル、装飾された布、銅の容器など売ってたりして、目まぐるしく登場するお土産売り場をハシゴする事に。

当初の目的である「建築をめぐる旅」が、徐々にSさんのショッピングエネルギーに巻き込まれて行く・・・と同時に、その楽しさや喜びも、感染していった。

おじいちゃんやちびっ子、貧富の差も含めて、多様な人を巻き込み、何百年も続いているバザールは、建築見学だけでは知り得なかったイラン文化の厚みに触れるチャンス、となった。








2014年6月4日水曜日

不在通知

子曰く、
父母在せば、遠く遊ばず
遊ぶに必ず方あり。


論語の一節・・・以前一度、確かにそうだな・・・と納得するところがあった。
知人へ連絡が取れなくて、えらく心配した。(父母の立場、ではなかったけれど)

明日からイランに行ってきます。
両親と兄弟、仕事でお付合いのある人には報告しておいたので、大丈夫・・かな?

という訳で、6/5−6/13 不在にしております。
画:hiromichi yasuda

2014年6月1日日曜日

鎌倉散歩ーその1(円覚寺舎利殿)

横浜の建築家仲間と、円覚寺舎利殿を見学する。
15世紀頃建立の円覚寺舎利殿は、教科書以外にちゃんと見た事は無かったけれど、今回は、建物の中までみられるという。

「おお、これが国宝か!」
と間近で見る・・・・
が、意外と小さい。
想像の舎利殿の80%縮小、ぐらいか。

その変わり、細工というかディテールがとても繊細であった。


室町時代に台鉋[ダイガンナ](いまのカンナ)が使われるようになった、と言われている。
垂木が細く、その一本一本が、きれ〜に揃っているのは、鉋のおかげであろう。
その登場は、当時の大工にとって、一つの事件だったと想像できる。

電卓をカチカチ叩きながら表計算をしている時に、[エクセル]が登場して、
おお!これは事件だ、、、、と思ったように、
大工さんも、
おお!!これは事件だ、、、と感動したに違いない。

面倒な表計算が苦にならなくなったように、
木を削る事が苦にならなくなった、に違いない。

舎利殿の垂木を見ていると、削ることに喜びや楽しみすら感じていたように、想像してしまう。


画:hiromichi yasuda