環境デザイン・アトリエ

横浜の建築家からのメッセージ。
日々感じた事を綴ります。

2012年3月31日土曜日

Back to the future

だいぶ前になるけれど、東工大の藤岡先生(建築史)から、「歴史家は未来を予測する事は出来ない」という趣旨の話を聞いた事がある。
歴史は知っているけれど、未来は分からない・・・・とまあ、その通りで、身も蓋もない話なのだけど、その続きが面白かった。

僕たちは、「後ろを向き」ながら「背中から未来に向かう」のだと。歴史家の仕事は、常に更新されて行く現在ー過去が見えるのだけ。
乗り合いバスの最後部の座席で、通って来た道を見ているようなモノか・・・

そのなかで出来る事は、日々更新されて行く現在ー過去から、ある法則性のようなものを掴む事、だと。

なるほど。
Back to the future











2012年3月30日金曜日

断熱の必要性

川崎にある民家園は好きで、よく行く。
古民家を見て思うのは、昔の人は、壁一枚で、しかもすきま風の入る家で、厳しい冬は大変だったろうな、と。


ここに菅原家というのがあるのだけど、この住宅、夏と冬で衣替えをする。
山形の豪雪地帯にあった住宅なんだけど、冬には藁で壁を包むんだそうだ。


はは〜ん。
雪よけという意味合いもあるけれど、僕は「断熱効果」のためじゃないかとよんでいる。
   菅原家:川崎市立日本民家園   

*昨年完成したH邸が、「エコガラス」のHPで紹介されました。
 断熱を考えた家です。


2012年3月29日木曜日

年度末のぼやき


年度末は、どの業種も忙しいと思うけれど、建築もそう。
公共の仕事にしろ、住宅の仕事にしろ、その他諸々、年度末に引渡しが重なり、チョー多忙になってしまう。

しかも、何故かその他の行事も重なってしまうのデス。。。。忙しい時に限って。

仕事は不運じゃないけど、「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」「踏んだり蹴ったり」と諺にあるように、同じ状況の「出来事」が重なる・・・絶対なんか法則がある・・・と思う。
時間がある時に、ゆっくり考えてみよ。

2012年3月28日水曜日

瓦礫の中でー今和次郎

先日、汐留ミュージアムに今和次郎の展覧会に行って来た。今和次郎さんの展覧会?と侮っていたけど、最終日前日ということもあってかなりの賑わいだったです。

展覧会の中で、印象に残ったのは「バラック装飾社」について。今さんは関東大震災直後の東京を見るに見かねて「バラック装飾社」を立ち上げる。簡単に言うと、震災後に次々と建つバラックをペンキで装飾するというもの。

様々な色が混じり合い干渉すると、鈍い灰色になってしまう。嫌というほどテレビ映像で見た世界だ。
くすんだ瓦礫の中では、黄色や赤や青の美しい原色が人にどれだけ希望を与えるか・・・
今さんは、荒廃した中に美しいものが現はれる喜びを身を持って体験していた。





恥ずかしながら、今まで今和次郎さんの活動には興味が無かったけれど、今はリアルに想像出来るのです。


*今和次郎:「考現学」や「生活学」というジャンルを築いたり、「建築家」「大学の先生」とマルチにわたって活動

2012年3月26日月曜日

智に働けば角が立つ・・・・

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。」


これは、夏目漱石の有名な草枕の冒頭。
カントの知情意(人間のもつ三つの心の働き)からヒントを得た文章と言われている。


東北の復興支援を考えるとき、いつもこの言葉が思い浮かぶのです。


智とは、知識、理論、理屈のこと。あまり理屈ばかり言っててもしょうがなくて、実際に行動しろよ!と。


情とは、感情の事。ボランティアの人達は、ホント頭が下がるけれど、組織化されていないボランティアは、被災地では迷惑になってしまうとの話も聞く。


意とは、意志の事。意志はあるのだけど、何をやったら良いか戸惑っている人も多い。


昨日、JIA(日本建築家協会)で行われたアーキエイドの東北復興についてのシンポジウムに参加して来た。法政大学の渡辺さんが司会で、東北大学の小野田さん、東北工業大学の福屋さんらが活動報告をしていた。


かなりボランティア色が強くて苦労されているようだけど、「組織と仕組み」を作って(智)、「被災者に接し」ながら(情)、「意志を強く」持って(意)がんばっている。


本当に頭が下がる。
アーキエイドとは、東日本大震災に対する建築家による復興支援ネットワークのことです。


2012年3月25日日曜日

決定と責任

設計者は、現場で次々と決定する役割を担わされる。
大工さんから「此処の納まりは?」塗装屋さんから「色は?」設備やさんから「配管が通らないんだけど・・・」
設計である程度詰めているけれど、最終判断はやっぱり現場。


「決定する」事は、現場の「責任を負う」事と同義。
瞬時に決めなければいけない事と、冷静に考える必要がある事と、その判断も含めて決定しなければならない。


判断が間違うと仕上がりで「あちゃー」という事になるし、決定が遅れると現場が混乱する。


今日は「心地よい一日」じゃなくなったけど(笑)、現場とはそういう所です。



2012年3月23日金曜日

符号分割多元接続(CDMA)

符号分割多元接続。(CDMA)
この言葉を聞いたのは、その解析に関わる研究をした同級生と飲んだ時でした。


なんのこっちゃ良くわからないけれど(しかも漢字が多すぎる!)、情報系専門家の間では、画期的な方法だったようです。


受け売りですけど、簡単に説明すると、
『携帯電話なんかで、情報を送信する絶対量が限られている時に(というか容量には限界がつきものなんですが)、如何に多くの人が喋れる回路を準備するか?』という、限られた容量を効率よく使う方法。


要は、情報を詰め込む技術のこと。


それを聞いて、ハタと思ったのだけど、引越のときの話。
引越業者さんのトラックと、部屋にある家具・備品の量を見比べて、よくもこれだけの荷物をトラック一台に詰め込んだなあ・・・と感心する事があったけど、あれと同じか・・・・・・(・・絶対違うと言われそう・・・)


ま、それはさておき、「情報」の話って、「空間的」に考えると理解しやすいですよ。







2012年3月22日木曜日

横浜国立大学卒業設計+Y-GSA優秀作品展覧会

先日、卒計(横浜国大)の講評に行って来た。
学生の作品を見て思う事だけど、彼らは時代の変化に敏感に繊細に反応している。それはいつの時代も例外はない。


ところが、今年はそれが不思議な形で現れていた。
どういう事かというと、全体的に元気の無い、設計から溢れるようなエネルギーを感じる案が少なかった。例年と比べて学生達の能力は変わらないはずなのに・・・



建築教育は、建築を作る理屈(理論)と、その作り方(方法)を教える。何年か教えていて感じたのは、それが時代によって微妙に変化していくこと。特に時代が大きく変わる時には、それまでの教えが、気がついたら「過去のモノ」になっていた、なんて事がある。
今年の学生はそれを無意識に感じていたのではないだろうか?

誤解を招くので言い方が難しいけど、彼らが「肌で感じている時代の空気」と、教わった「建築教育」との齟齬に戸惑っているような、彼らの悩みが無意識に出たのが今年のプレゼンテーションだったと・・・


ところで、学生の提案では、原田さんの卒計案が良かった。四国の田園風景を取り上げた計画案で、美しい風景描写が印象的だった。



2012年3月20日火曜日

新建築住宅特集4月号

本日発売の新建築住宅特集4月号の「住宅を読む」というコーナーに執筆。
「新建築」とは建築系の雑誌(どちらかと言うと硬派)、何度か住宅を掲載してもらったので長いおつきあいになる。


文章を書くのは、「読む」のと違った感覚です。
「模型の話」でも書いたけど、頭の中の想像物を一度外に出す作業で、さらに言うと「出しながら考える」という感じ。
だから、書いているうちに、当初想定していた結論と変わってしまう事がある。
(こう言ってしまうと身も蓋も無いけど)


でも、たとえ結論が変わっても、頭の中が整理されたは、
「昔から俺はそう思ってたんだよな・・・ふむ」みたいな、妙な納得感がある。


店頭で見かけたら読んで下さいね。
http://www.japan-architect.co.jp/jp/new/book.php?book=JT





2012年3月19日月曜日

ごひいきの自転車屋


以前、パンクした自転車を修理してもらった際その手際の良さと、頼んでもいないのにブレーキの調整やチェーンのたるみをなおしてくれたのに感心してしまって、以来、自宅からはちょっと離れているけれど、その自転車屋さんが御贔屓(ごひいき)。

今回も、前輪がパンク。
早速修理が始まるが、前輪解体に始りパンク修理は早々に終えて、ベアリングのチェックとオイルの補給。ブレーキ調整に、ねじの締りのチェック。

パンクの度に、車検を受けているようなもの。
「事故の無い日常」は、この自転車屋さんに支えられている。

2012年3月18日日曜日

窓の話3

窓からの風景
毎日、午後4時ごろになると、大岡川に決まってボート現れる。
多分、高校のボート部だと思うけど、3往復するので何度か窓の外を通過する。
スーッと通り過ぎ、後に残った航跡が美しい。


ところで、5人乗っていて、一人だけボートを漕がずにメガホンを持って声を出している。
このポジション、体力使わなくて楽でイイなあと思っていたら、意外と重要なポジションと聞いた
COXと言うらしい。

舵を切る事、漕ぎ手を励ます事、そして何よりレース全体を見渡して指示を出すという重要な役割だとか。


なるほど。





2012年3月16日金曜日

読書の話2

以前「読書の話」を書いたけど、その続編。


前回の話はあまり一般的でないので、いまいち共感できなかっただろう(と思う)けど、今回もそう。だから、ピンとこないかもしれないけど、スミマセン。


読書をするのは、「新しい知識を得る」知的好奇心や、「物語に入り込む」感情移入など、いろいろな楽しみ方がある。勿論、僕も否定しないけど、最近ちょっと違う事を考えている。というか、感じた。


相変わらず「喫茶店」で本を「三冊」「回し読む」のだけど、ある効果に気がついた。


文字を追っていると、時間とともに頭がスッキリしてくるんですね。それは内容に説得力があるとか共感できるとかと微妙に違っていて、音楽を聴いているような、あるいは森林浴に浸っているような、もっと生理的なものなんですね。
ある種の快感と言うか。
だから、読んだ後は、不思議と気分が良くなる。


多分、続けているのは、それが理由だと思う。





2012年3月15日木曜日

腰痛


最近、腰痛になった。
椅子を変えたのが原因だと思う。新しいモノにを変えて数日して始まったので。

先日、整体師になった友達からこんな話を聞いた。
「お茶の間で家族が座る位置ってあるジャン。あれって適当に変えた方がいいんだよな」
どういう事かと言うと、テレビに対していつも同じ方向に体が傾く。左に向いていると左に捩れ、右を向くと右に捻れる。傾いたままの姿勢をとり続けると、体の軸がズレて、腰痛、肩こり、の原因になるのだと。

ドキっとしたのだけど、通常、設計者はインテリアのレイアウトまで考えていて、それは良い事だと思っていた。窓の話参照]
でも、世の中のお父さんの、お母さんの肩こりに一役買っていたのかもしれいと思うと・・・・・・・・座った時に姿勢もイメージしておかないといけませんね。

ところで、僕の腰痛問題だけど、座布団を一枚椅子に乗っけて座るようにしたら、だいぶ良くなった。

2012年3月14日水曜日

2012年3月13日火曜日

眼鏡と建築


眼鏡を買った。
と、言っても視力が落ちた訳でも、老眼になった訳でもありません。
(多少は始まってるけど)
花粉症対策でメガネ装着は効果抜群なので。

購入する際に、まず、考慮したのは大きいこと。出来るだけ目の周りをカバーして花粉が当たらないように。(有用性)

次に思った事は、顔の形に合う事。フィット感というか、耳と鼻にしっかり引っかかるように。丈夫である事は勿論。(構造)

最後に、自分に似合うデザイン。(意匠性)

しばらくして気がついたのだけど、これって・・・・建築(ウィトルウィウスと同じですね。

ウィトルウィウス・・・建築を「強・用・美」から定義したひと。





2012年3月12日月曜日

「シンプル」の勧め

僕は部屋を散らかす訳ではないけれど、かと言ってそれ程整頓好きでもない。
(ま、普通ですね)


最近、事務所、自宅と、立て続けに所持品を処分した。かなり。


捨てることで所持品が少なくなって、最初に感じた事はスッキリした爽快感。
部屋が、スッキリ。
あと、モノが少なくなった効果として、探し物がすぐ見つかるようになった。


結局、必要なものはそれ程多くないんですね。

2012年3月11日日曜日

物事が解決する瞬間

設計をしていて、どこかしっくりいかない時がある。
どこが悪いという訳ではないのだけれど、レンズのピントが合わないようにぼんやり良くない。


そんな時は一日中スッキリしないのだけど、コーヒーを飲んでいるとき、
ふと、壁の「位置」が良くないと思い立つ。
早速模型に反映してみる。
確かに。


何気ない瞬間に、いきなり核心に焦点が定まる時がある。ピタッと。




2012年3月9日金曜日

植物から学ぶ事

「金のなる木」って知ってますか?
この木は多肉植物で、乾燥を好む。


枝をプチッと切って挿し木すると簡単に増える。
ところが、ここからが長い。1ヶ月ほどウンともスンとも言わなくて、心配になって水をやり過ぎると根腐れしちゃう。


じっと我慢してとにかく水の量を控えめにしていると、ある時期から解き放たれたように枝が伸び、葉が開く。


挿し木した時、その土や場所、水の量など自らが生育する上で相応しいかどうかじっと観察しているんですね。一定の期間を経て、OKだと察知した時から文字通り「根を張る」


建築をしていて感じる事は、人も同じ。
こちらが一生懸命になっても最初は空回り。相手はウンともスンとも。
ところが、ある時期から、心開いたように話が出来る。


なんでだよ〜と思っちゃいけない。相手の身になってみると「この人は本当に信用に値するかの?」をじっと見てたんですね。





2012年3月8日木曜日

花粉症の季節

いよいよ本格的に花粉が降り注ぐ季節になってきました。


全国二千万の花粉症の方々、お気持ちは良〜くわかります。ハイ
春うららかな最も気持ち良い季節なのに、花粉症で台無し。
出来れば避けたい季節になってしまった・・・・


風雨に打たれるトンボの気持ち。









2012年3月6日火曜日

窓の話ー2

以前、窓の話を書いたけど、その続き。
http://kannkyo.blogspot.com/2012/02/blog-post_21.html?spref=fb


うちの事務所と外の関係は、2階に事務所があって大きな窓が全面道路に面してる。
その窓辺にデスクを構えているから、窓を通して外を歩いている人が見える。


その効果は絶大で、お客さんが来たら8割の確率で僕が最初に発見。
窓を開けて二言三言ご挨拶をしてから、玄関を通して室内に入ってもらった。


うちは、モニター付きインターフォンは要りません・・・・パナソニックさんごめんなさい。





2012年3月5日月曜日

嬉しいような、切ないような

先日、実家のある湖西市に帰省。
鷲津の駅で降りると、ふわっと風が吹いて来た。少し潮の香りがして、その瞬間に、押し寄せるような懐かしい感情に襲われた。嬉しいような切ないような。

駅前風景もかなり変わったし、親も友人も年をとったけど、風の匂いが昔のまま。

感傷的になるのは心が弱っているシグナルとどこかの本で読んだ事があるけど、田舎に帰るとどうしても感傷的になってしまいますね。